『至上ではない人生』作品解説

 このたびは『至上ではない人生』をお迎えいただきありがとうございます。後書き、というよりかはちょっと言い訳みたいななんかよく分からないものを書いておりますので、よろしければご覧ください。なお、ネタバレ含みます。


<きっかけ>

 いつぞやツイートでも軽く語ったのだが、桑名江のキャラデザが自分の好みドストライクである(メカクレキャラを好きになりやすい傾向がある)。

 その上で、桑名江が実装された時、もうこれ以上新たな沼に落ちないという決心の元、ボイスは聞かない詳しく調べない育成しないなど抵抗をしていたのだが、まさかの歌合宮城公演で桑名江が顕現。それでもどうにか耐えに耐えていたのに、歌合大千秋楽で松井江が顕現したことで「あれ……え……でも宮城公演は桑名だったよね……あれ……????」と混乱し、何故かその反動で桑名江に落ちることとなった。かれこれ三ヶ月くらい頑張ったのだが駄目だった。定められたオチだったに違いない。

 そういう訳で、ほぼ勢いのまま、「桑名江は外見的に現パロ似合いそうだし大学生やってそう」という印象で突っ走って書き上げたのが「至上ではない人生」。この話は本当に、オチも中身も何もないSS連作のつもりで書いていたのだが、話を連ねる内に設定的な何かが出来上がった。一度ピクシブに投稿したものの、どうせならもうちょっと設定を練って、話を追加して、ひとつの作品として完成させたいと考え、四月くらいから修正を繰り返し、こうして発刊となった。

 加えて、三月頃からイベント中止が相次ぎ、同人誌印刷業界にも少なからずダメージが出ているという話を聞いていた。それならば、お世話になっている印刷所で何か本を出せないかと考えた結果、その時点で一番文字数が多く本にしやすかったのが「至上ではない人生」だったというのもある。ついでに言えば、『真夜中幻談』以外、出した本の背表紙がずっと薄緑だったので、そろそろ違う色の背表紙が並んでもいいのではないかという、よく分からない思いつきもあった。

 そんなこんなの事情で出来上がった『至上ではない人生』だが、まさかここまで長くなるとは思っていなかった。ついでに言うと、膝さにを本格的に書くまでには二年くらいの時間を要したのに、桑さにを書くまでに三ヶ月程度しかかからなかったという、この、上記の事情も含めた即オチ二コマみたいな、この……自分のちょろさが……。

 ゲーム実装以降、ミュで一言二言話した以外は人物像が分からないキャラでCPを組むというのはなかなか勇気が必要だったし、作品として成立させるのが現パロなのはどうかと自分でも思ったが、書きたいと思ってしまったので仕方がない。解釈違いもあるとは思うが、数ある本丸の内のひとつでは桑名江がこういう性格と考え方だったのだと、そういう納得の仕方をしていただければ幸いである。


<中身について>

 刀さにで転生現パロ、読む分には好きだし書くのもそこそこ好きなのだが、どうしても、「何故このCPは転生したのだろう」という疑問を持ってしまい、なかなか軽い気分で書くことが出来ない。設定を考え尽くさなければファンタジーを書けない厄介な性格が、遺憾なく発揮されている。

 そういう訳で、じゃあ、何故この桑さには転生して大学生をしているんだろうと考えた結果が、「前世の審神者は体が弱く若くして亡くなっている」「亡くなる前の願いが普通の人生を送ることだった」「臨終の時に桑名がそれに立ち会っている」という設定群で、そこから「桑名江が審神者の転生に付き合う必要はあるのか」「あるとすればどんなきっかけがあったのか」「そもそも新しく実装された桑名江と審神者では仲良くなるには時間が足りないのではないか」「それでも転生先で共に生きる理由は何か」「臨終に立ち会うのが桑名江であることに意味はあるのか」などといった疑問を解決するための設定を足していき、今の話となった。

 桑名江のキャラクターの解釈がいまいち定まらない中での設定ではあったが、書いている最中は八割方楽しかったし、普段書いている話とまた違った方向性だったので、いい気分転換にもなったと思う。なお残り二割は何かと言えば、入れるネタの選別と各SSごとに入れているちょっとした設定や小物をどう回収するかという方向での悩みである。総じて楽しかった。

 自分の通っていた大学には農学部はなく(それに近い学部はあったが……)、イマジナリ農学部生である。大学のキャンパスや環境については今まで行ったことのあるところを統合してなんとなく描写しているので、やはりイマジナリ大学である。夏休みの図書館通いは多分、私の所属していた学科の特性的なあれそれが絡んでいるので、実際はそこまで通う学生はいないかもしれない。でも、アパートの電気代節約に図書館に避難するとかはあった気がするので、まあ、そんな感じで。

 あと、8月1日は多分まだ夏休みじゃないと推敲していて気付いてしまったが、細かいことは気にしない方向でお読み頂きたい。これはイマジナリ大学のお話です。


<登場人物一覧>

・主人公

 生まれ変わっても虚弱体質はあまり変わらなかった。前世は、審神者になったことで虚弱体質に拍車が掛かり、病を得て早世した。転生後は審神者という職そのものがないので、何事もなければ普通に生きていけると思われる。それでも、何の因果か、自分の命日には必ず体調を崩す。

・桑名

 見届けるつもりだったのにと言いつつ、中学生の頃には恋人同士になっていたので、多分いろいろと無自覚に事を進めていたもよう。主が亡くなったその日のことを未だに忘れられないし、忘れるつもりもない。ついでに言うと、キヨ君には昔も今も敵わないと思っている。

・キヨ君

 我らが初期刀。審神者の看病を長いこと受け持っていたので、看病に慣れているというのは本当。桑名に対して思うところはいくらかあるが、総括すると「主を頼むよ」と言ったところ。とはいえ、桑名が主の幼馴染みという立場で育ってきたのは正直ずるいと思っている。

・次郎ちゃん

 江戸文化専攻。歌舞伎同好会と剣道部の兼務という設定を作っておいて出すのを忘れた。なんだかんだ面倒見がいいので、今世でも主人公に対してそれとなく助け船を出すことが多い。

・軍手の先輩

 別の話でちゃんと出したい人。この話の審神者の刀剣男士ではないという設定のため、名前を明言していない。ピースサインは自分の意思でやった訳ではなく、桑名にやってと言われたので流されるままにやった。スイカを切るのは結構楽しかったとのこと。

・松井君

 桑名とは二卵性双生児のような、そういう印象で書いている。今世では別に血は繋がっていないものの、遠慮のない仲。経済学部生。主人公とは学部棟が近いため、よく顔を合わせる。主人公は松井君の顔色が悪いと思っているが、松井君も主人公の顔色が悪いと思っているためお互い様である。

・豊前君

 近くの専門学校に通っている。休日はよくツーリングをしているらしい。主人公とは何度か桑名の部屋で会っているため、面識はある。見守る立場。

・蜻蛉先生

 主人公と桑名の恩師にあたる先生。ふたりの実家のある辺りで働いている。この人の名前を出せば桑名が黙るので最終兵器扱いされている。

・鶯丸

 主人公の先輩。多分、和歌の研究などをしていると思われる。この人も見守る立場。ほぼほぼ書いている人の趣味で出てきてもらった。

tenco

ひとりごとおきば

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