『過ちに名前をつけること』作品解説

「過ちに名前をつけること」というタイトルについて

 ご存じの方もいらっしゃるかもしれないが、同名のSSがある。このSS、実は短編にするつもりでプロットをたてていたのだが、いろいろあってSSにしてしまった上に、考えていた展開が「貴方が花を手折るまで」と酷似していた。そのため、今回の短編集を作るにあたって、プロットは「貴方が花を手折るまで」に吸収され、タイトルだけが短編集の名前として残った、という経緯を持つ。

 特に「貴方が花を手折るまで」と「祈るひと」が、ある意味では過ちをテーマとしているので、あながち間違ったタイトルでもない。

 このタイトルに対応するフレーズが「その過ちを愛と呼べ」なので、カバー裏の宣伝文句的なところにこの一文が入れられている。正直、カバー裏の文章を考えるのが非常に恥ずかしいので、この形式を採用した3月頃の自分をぶん殴ってでも止めたい。

 以下、各話の解説。といってもあまり真面目に解説はしていない。どちらかと言えば原稿思い出話。まったく何の参考にもならないが、作業中に聞いていた記憶のある曲もメモしている。だが、例によって聴いている曲と書いている話の傾向が一致しないので、まあこういう趣味なんだなあ、という程度に見てもらえれば幸い。


<各話解説>

「貴方が花を手折るまで」

・GWの折り本企画で出した話を元に書いた話。折り本にした時点でこんな感じの展開を書きたいなあとぼんやり考えていて、いざ短編集を発行しようとした時に、真っ先に書くことを決めた話だった。

・驚異の2.5万字。普段1,000字前後のSSしか書かない人間からしてみれば、とんでもない文章量である。校正が大変だった。『真夜中幻談』の「うまれなおすもの」とほぼ同量のはず。

・長い作品であると同時に、己の未熟さを感じてしまい、読み返すのが辛かった作品でもある。もっと設定や描写を詰めた方が良かったかな、などと考えているが、これ以上、地の文が増えてもなあ……といったところ。

・とはいえ、前々から書きたかった話でもある。褒美の中身がエスカレートしたり、面布の下を暴こうとしたり、穏やかな表情のまま審神者を押し倒したりなどなど、自分の性癖と趣味をいろいろ混ぜ込んでいる。

・距離の詰め方がおかしい膝丸。ピュアなんだか腹黒なんだか分からないが、本人はいたって真面目にやっている。

・小豆に支えられているシーン、帰還の挨拶の直後に気が緩んで軽く意識を失っていたのだが、審神者に名前を呼ばれて起きたという感じ。中傷相当と書いてはいるが、重傷寄りの中傷だったので、おそらくひとりで立つのも大変だったと思う。

・twitterで3月終わり頃に呟いていたのだが「御身を頂戴したい(賜りたい)」という台詞を膝丸に言わせたかった。ここで言わせた。あくまで敬語で迫らせたかった。

・書く時は何故かEvanescenceを聞いていた。ちょうどこの頃、amazon musicに登録したテンションのままにいろんなアーティストをダウンロードしていたので、いつもより余計に聞いている曲のジャンルが分からない状況だった。


「料理の話」

・当初は書く予定がなかったものの、何故か書いてしまった。結果として、短編集の内容のバランスを取る意味でも、書いて良かったと思う。

・他3編の膝丸がなかなか強かなので、ちょっと初心な個体を書きたかった。可愛く、パステルカラーっぽい話にしたかった。

・「貴方が花を手折るまで」の後にくるので、ライトに読める話を書こう、と思っていた。そのため、他の話に比べると台詞を多めに、かつ台詞だけで話の展開が分かるように心掛けた。また、膝丸視点にすることで、ちょっと印象を変えたいという意図もあった。

・審神者をかわいめに描写したつもりなのだが、かわいくなっているのだろうか……。

・プリンの食レポ部分、残念なことに、イマジナリプリンによる食レポなので、こんな感じのプリンはこの世には存在しない。ただ、書いている間中、プリンが食べたいと思っていた。記憶が正しければ、職場での待機時間(夜8時前後)に書いたシーンだったと思う。目の前にプリンがあるはずもなかった。今も読み返すたびにプリンが食べたくなる。

・鶴丸、書きやすい訳ではないのだが、性格的にいろんなことをしてくれそうで、ついつい登場させてしまう。彼が作ったロシアンルーレットたこ焼きの話もいずれ書いてみたいものである。

・実際の炭酸ゼリーはしゅわって感じではなくびりっという感じなのだが、これだと感電しているみたいだし、しゅわっの方が可愛い気がしたので、そういう語感優先で表現している。

・時間があれば炭酸ゼリーを実際に作りたかったものの、いかんせん料理下手の料理嫌い故、時間があってもなくても結局作ることはなかった。イマジナリ炭酸ゼリー。

・タイトルがまったく思いつかず、結果、何の面白みもないタイトルになってしまった。不覚。

・これだけ、何かを聞いていた記憶がない。多分、The glitch mobのアルバムを流していたと思うのだが……。


「けだものがたり」

・SSで書いた「ケダモノガタリ」を大幅に書き直したというか、ほぼほぼ書き下ろし。噛み癖のある膝丸とただひたすらにいちゃいちゃする話。中身はない。

・もともと、動きを描写するのが苦手で、審神者と膝丸が絡んでいるシーンは特に、ふたりがどんな体勢をとっているのか、腕や足の位置はどこか、などを逐一考えながら書いていたので頭の中がぐちゃぐちゃだった。もういっそモデル人形を目の前に置くべきではないか?

・短編集は全年齢向けであること、キスするタイミングに条件があることなど、勝手に自分で自分に縛りプレイを敢行してしまった。ただいちゃいちゃしているだけなのに、全年齢向けの接触としてはどこまでが許されるのか考えながら書く羽目になり、だいぶ頭を悩ませた話でもあった。いっそ何の制約もなかったら、もうちょっと派手に動きがあったかもしれないと思いつつも後の祭りである。

・いやもう少しねちっこく書きたかった……力不足……。

・短編集の並びには「審神者と膝丸の関係性の変化」が織り込まれていて、「貴方が花を手折るまで」は恋をしていることを自覚する前の段階(から一気に奪い取る関係に変化してしまった)、「料理の話」は恋を自覚し始めた段階、「けだものがたり」は恋人の段階、「祈るひと」は夫婦の段階かつ終わる先をそれぞれ担っている。そういう訳で、この話は恋人の段階なので、審神者も膝丸もいちゃつくことに抵抗がない、という設定。それはそれとして、女の子が恥ずかしがることなくキスするのを書いてみたかった。

・今回の4編の中で、一番書くのに時間がかからなかった短編。すごい。

・多分、作業中はサカナクションの「モス」を聞いていたと思う。


「祈るひと」

・短編集に入れようと思ったものの一度断念し、再度書こうと挑戦してなんとか書き上がった一作。下手をすればこの短編集に入らない可能性があった。頑張って書いた。

・5月半ばにリプツリーで書いていた、恋刀が錆びていく話を短編に落とし込んだものでもある。リプツリーで終わらせるにはちょっともったいないという思いもあったので、こうやって形にできてほっとしている。

・これもタイトルに悩んだ。タイトル案だけで5つほどあったのだが、結局、錆という単語を出さない形で落ち着いた。

・双騎出陣を観劇して、髭切と膝丸の理想の最期はああいう形なのだと自分の中で答えを出してもなお、この話を膝さにで書きたかった。双剣の片割れである兄と折り重なるように迎える終わりよりも、己の在り方を変えてでも迎えたい終わりがあったのなら、という自分の理想を詰め込んだ形でもある。本丸の数だけストーリーがあるということで、こんなこともあるのだという解釈で読んで頂けるとありがたい。

・錆は、膝丸の意識に合わせて広がっていくという設定。主に知られたいけど知られたくなかったから、まずは内側から錆びていった。そのため、審神者が手の感触に違和感を覚えるシーンで既に、壁に手をつく描写=身体能力が落ちている描写をしている。審神者は指先から錆びていると思っていたが、実際には背中も錆びていた。だから、寝室のシーンでは着替えを中断していた。主に見つかってからは隠す必要もないので急速に錆が広がっていった。

・錆にまつわる話はもうひとつネタがあるので、それもいつか書けたらいいなあ。

・カバー裏折り返しのQRコードから、この話の数年後の話を掲載しているページに飛べるのでよろしければご覧ください。パスワードはQRコード内に記載あり。

・書く時は主に椿屋四重奏の「LOVER」という曲を聴いていた。この曲があてはまるような話をひとつ考えているので、それもいつか……書けたら……書けるかなあ……

tenco

ひとりごとおきば

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